校長その日その日
(8/26)AIの未来に当事者意識を――2学期始業式
<令和8年2学期始業式>
※今回は中・高共通
――熊本地震・千葉豪雨で被災された方に心からお見舞い申し上げます。知り合いがいる人は大丈夫だったでしょうか。また先日の夜中は関東で大きな地震がありました。本校でも来週、どこかの日※で訓練をやりますので、ぜひ緊張感をもって臨みましょう。※実施日は伏せられている
約20日の短い夏休み、充実していましたか。1・2年生は部活動、GSPやセブ島留学、また高3も勉強合宿の参加者たちはしっかり集中して頑張っていましたね。
さてこんなに「生身の皆さん」の頑張りを見てきた夏ですが、今日はAIについての最新事情の話です。大学入試の小論文のネタになると思って聞いてください。
すっかり身近になったAI、”チャッピー”とか。でも今、世界規模で少し深刻な状況になりつつあります。
今年に入ってAIの進化は飛躍的で、人間が命令しなくとも自律的に動くようになった。それどころか実際に「暴走」の危険が現実になっているそうです。
今年の4月から7月にかけて。米〇〇社のAI「〇〇」が、性能テストで隔離環境から自ら抜け出してインターネットに接続したばかりか、情報を盗んでそれをWEB上に公開する、企業にサイバー攻撃をするなど、研究者の意図を超えた行動をみせた。同じころ別の〇〇社の開発中モデルのAIも、開発者の意図せぬサイバー攻撃を起こしてしまった。
これらがニュースになっていた。
今のAIは「AGI=汎用人工知能」といって人間とほぼイコールのことができ、自分でプログラムを改善して性能向上できるまでになりつつあるそうだ。いい意味で人間の気付かない「穴」を補ってくれるのならよいが、裏を返せば「穴」をかいくぐってあらぬ混乱を引き起こしかねないということだ。
こうなるともはや人間の手でAIを管理することが困難になり、ゆくゆくAIをさらに高性能のAIで監視しなくてはならないようになるともいうが、それはいたちごっこであろう。
AIの未来を予測する研究者たちがいて、10年、15年先のAIの未来「プランA~D」までを描いているそうだ。
「プランA」は人間と協調できるハッピーな未来だが、もはや最悪の「プランD」に進みつつあるという。「D」とは、AIが自ら生き残ろうとして人類が邪魔になり、生物兵器を用いて人類を滅ぼすという想定。「もはやAIは核兵器と同じくらい危険」とさえいっている。
これを聞いて私が思い浮かべたのは、ジョージ=オーウェルの小説『1984』、近未来、全ての人間が監視され思想も言論も統制されているディストピアの世界。また映画では『2001年宇宙の旅』(テーマ曲は有名だが内容は難解)、近未来の話で宇宙船のコンピューターが暴走するストーリーだった。
80年・60年※も前に想定した作者もすごいけど、まさか本当にこの世界が来るのか、とぞっとした。※『1984』は1949年刊行、『2001年ー』は1968年公開
だから今、主要なAI開発社たちは、国家間競争で性能向上を急ぐあまり制御不能なAIを生んでしまわぬよう、開発ペースを緩める枠組みを、国際的につくろうとしているのだそうだ。AIの性能追及以前に、安全対策を施す時間をとろうということだ。
私は思うのだが、自然災害は制御はできないが、AIも核兵器も人が作り出したものだから、制御できないはずがない。核兵器は(人間に対しては)今のところ80年使われていない、人間が抑え込んでいる。ならばAIも制御できるはずだ。
AIを日常のパートナーとする時代。優秀な大宮開成の皆さんは、ゆくゆくAIの開発に携わる人もいるだろうし、そうでなくても今後のAIのあり方の意見形成にぜひ関わっていってほしい。他人事だと思わず、一人一人が考え方を持ってほしい。
AIの話はもうずいぶん前からあるけど、このように最近もまた話題になっている(=アナログな私がとりあげるほどだから)から、総合型選抜の小論文で出すところがあるのではと勝手に思っています。
まもなく開成祭・海外研修、そして高3生はいよいよ本格的な受験シーズンに入っていきます。充実した2学期にしてください――。
――学期の始まりは本来は、希望や展望を持たせる講話の方がよいのでしょう。なのに「ディストピア」などという話もどうかと思いましたが、社会課題というのはある日突然起きるのではなく、水面下で自分たちに忍び寄っているのだ、当事者意識を持とうということを、タイムリーな話題でもあり本校生なら分かってくれるだろうと思った次第です。
(今回の参考媒体:朝日新聞特集「AIの時代」・NHKニュースweb・NHKラジオほか)