校長その日その日
(7/10)5歳の少女がのこしてくれたぬくもり――林明子先生へ
「牛乳、くださーい」「目がしぱしぱしました」…最後にこの本を開いてから15年?近く経っても文章を思い出せるのは、主人公「みいちゃん」の表情がバックにあったからでしょう。
絵本作家の林明子さんの訃報を聞き、感慨深く、そしてあらためて感謝の念を深くしました。
わが子が幼かったころ、冒頭の林さんの挿絵作品『はじめてのおつかい』をはじめ、同シリーズほかたくさんの絵本に、本当によくお世話になりました。
毎晩のように読み聞かせをせがまれ、しかも同じ絵本を「よく飽きないなあ」(+早く寝てくれないかな)などと思いながら…。
絵本の絵というのは文章が少ないぶん、読み手に世界観を刷り込ませる力があると思っています。
上記『-おつかい』でいえば、男親の私でさえ不思議と「5歳の少女」の目や気持ちになっていた気がします。
その秘密は、林さんの絵にありました。
林さんの絵は「日常にある景色」でありながら非常によく描き込まれていて――『ーおつかい』でいえば道端の掲示板とポスター、ブロック塀、電線にとまっている鳥――5歳児の目に止まるもの、目線の高さも意識されていたか?と思わせる画力が、読み手をいつの間にか本の中の街に引きずり込むのです。(林さんは甥・姪の表情を非常によく観察していた、と新聞にありました)
また林さんのユーモアか、登場人物が全く別の作品のはじっこに再登場しているのに気づいたときは、子どもと大いに笑ったものです(ぜひ探してみてください)。
『はじめてのおつかい』初刊は1976年といいますから今年で50年。
今も我が家では “当時の読者” が「あのね、パンをくださいな」などと、当時父親が読んだ口ぶりをまねておどけることがあり、思わずニヤっとしながらも時を超えて伝わる絵本の力、家族に遺してくれたぬくもりを思います。
「みいちゃん」、本当にお世話になりました。坂道の先に、林先生が立っていらっしゃるかもしれないね。あなたを見ながら、たくさんの子どもたちが立派な大人になりましたよ…。