校長 その日その日
Principal Day by day
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2025/10/07
「何かを成し遂げるには時間がかかる」「本当に一生をかけるものを見つけるには、考え抜くことが必要」(朝日新聞10.7朝刊)。
――今年のノーベル生理学・医学賞が坂口志文さんに決定、免疫反応の暴走を抑える「制御性T細胞」の発見が評価されたことによるとあります。
私たちの体は不思議なもので、体を守るべき免疫が時に私たち自身を攻撃してしまうことがあり、それにブレーキをかけるのが制御性T細胞…ということです。
ここで私が首肯したいのは、坂口さんがインタビューで答えていた冒頭の言葉です。
私たちはつい「〇〇は××に効く」というような即効的な研究成果を求めがちですが、そこに至るまでの基礎研究=地道でいつ成果が出るかも分からない=にこそ、きちんと研究予算がついてほしい。以前の日本のノーベル生理学・医学賞受賞者も同様の主旨を述べていたと思います。
考古学の仕事でもよく「大発見は?」と訊かれ苦笑いすることがありましたが、歴史を一夜で塗り替えるような発見は稀です。一つひとつの発掘調査事例を積み重ね、多数の研究者の批判を経てようやく一つの「見解」になる――科学では基本のプロセスを、坂口さんのコメントであらためて確認した気がします。
「すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる」。かつての慶應義塾長の小泉信三さん(1888~1966)の言葉も思い出しました。
「時間のかかる」ことに厭わず挑む若い人が、これからも続いていってほしい。坂口さんが所属されている国立大学は本校からも毎年受験生がいるので、ぜひ刺激を受けて…!と思うニュースでした。今日の授業で取り上げた教員もいたでしょうか。