校長 その日その日

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2025/07/07

(7/7)超えたい川、超えてしまった河――七夕に思う

今日は令和7年の7月7日、七夕です。本来は旧暦の7/7=今年だと8月29日=で、地域によっては旧暦で迎えるところがありますね。

 

「牽牛と織女が1年に1回だけ、天の川を渡って会うことが許される」の物語は、中国の古典に端を発し、7世紀には日本に伝わっていたようです。※阿部泉『資料が語る年中行事の起源』2021清水書院

 

新暦のこの季節だと、湿気で夜空は霞みがち、都市部の光害もあってほとんど天の川は認識できません。ただ牽牛・織女の2人にとっては 「超えたい川」であることは間違いないでしょう。

 

――ところで今朝、我が家の豚児曰く、

七夕と思って新聞を見たら、なんだか重い気持ちになったよ」―

 

88年前(1937・昭和12)の7月7日は「盧溝橋ろこうきょう事件」、これを機に日中戦争が始まった、と記事にありました。日本史でも必出の事件です。

 

日本で「あの戦争」といったらほとんどの人は「真珠湾攻撃(1941)で戦争は始まった」と思いがちですが、実はその4年前、中国・北京郊外の河に架かるこの橋を挟んで7月7日、中国軍と日本軍が軍事衝突したことで、以降太平洋戦争まで継続する泥沼の戦争に入っていったのです。

 

実は大学生当時、私はこの盧溝橋を訪れたことがあります。

石造りの、歩いて数分で渡れるスパンの橋。春先だったせいか橋下に河水はみえず、砂と石ばかりの荒涼とした川床が広がるだけで、「なぜこんな何でもないところで戦争が始まったのか…」と思った記憶があります。

日本人がここで写真を撮るのは不謹慎で、現地の人に勘違いされるからやめよう、とも友人たちと話した気がします。

 

この河を「超えてしまった」ことで、その後日本と隣国の運命が変わり、幾多の人々の命が散っていったことはいうまでもありません。

 

超えたい川、超えてしまった河…7月7日に思うことです。