校長 その日その日
Principal Day by day
Principal Day by day
2025/09/10
「両手をはたいてごらんなさい(パチン)今、音が出たのは右の手からですか、左の手からですか…?」
――6月の奈良京都伝統文化研修で座禅体験した建仁寺さんでの法話だった気がします。
人間、自分勝手ではだめなのだ、他者と力を・心を合わせてこそ何かを成し得る、そういう例えだったと記憶しています。
なぜそれを思い出したのかというと、先日の新聞※に「拍手の音の正体が分かった」という記事が載っていたからです。 ※9/9朝日新聞朝刊18面「拍手 両手ぶつかる音じゃなかった」
米国の大学の研究によれば、拍手の音は手どうしがぶつかった音ではなく、その瞬間に指の間から空気が噴き出す際の共鳴音だということです。原理的には、空き瓶を口で吹いたときに音が鳴る現象に近い、と。
“手をたたけば音が鳴る”という当たり前のように思っていることが、実は原理がよく分かっていなかったということ、さらにそれを科学的に解明しようと取組む研究者がいたということに、意外さと感銘を受けます。
かかわった研究者の一人は「ある映画を見て研究を思い立った」、
ほかの研究者も「多様な分野の知識の統合が必要な研究だ」と感じ、日常に注意を向ければ学ぶべき新しいことは多い、と言っています。至言ですね。
21世紀も四半世紀過ぎ、しかし未解明のことは多い。
「当たり前」を疑う思考、そこから新たな発見が生まれる――学校現場でも日頃言っていることですが、多様な視点・関心を呼び起こし、柔軟な頭をもつ人間を本当に育てているか…?
教科書、授業、教室の勉強だけでは、自分一人だけでは世界は広がらない。あらためて考えさせられました。
なお言うまでもありませんが、この研究によって冒頭の禅問答の真価は少しも損なわれない。
むしろやはり片手だけでは音にならないことが証明された…というのは無粋ですね。