校長 その日その日

Principal Day by day

校長 その日その日

 

2024/02/02

(2/2)締めればよい、ものでもなく

先日、通勤に使っている自転車が調子悪いな、と思っていたら、小さなネジが1本外れていたのでした。走行に支障ない部分でホッとするとともに、補修してまた調子よく乗れています。

 

私たちの生活にあまりにも身近過ぎるネジ。家電・自動車・鉄道…使われていないものはありません。しかし、日本がネジを知ったのは織田信長の時代と、比較的最近といえます。

 

きっかけは「火縄銃」。戦国時代の1543年、種子島に漂着したポルトガル人が持ち込み、島主の種子島時尭ときたかが2挺を買い受けました(対価1億円とも!)。

時尭は、鍛冶師かじし=金属加工集団=の八板金兵衛に命じ、複製を試みます。しかし金兵衛たちが謎に思ったのは、銃筒の元側(銃口とは反対側の端部)がどのようにフタがなされているのか、でした。

 

その秘密が「ネジ」だったのです。

 

爆圧に耐えられるよう、強固に嵌っていなければならない。かつ銃撃後は火薬の滓を掻き出すために外せなければならない―ネジがその役を果たしていました

金兵衛たちの火縄銃の複製技術は本州に伝わり、紀伊や堺で大量生産され、織田信長らに合戦で活用されるようになったのはよく知られています。

 

ご存じのとおり、ネジは工業規格で様々な太さ・長さ、らせんの角度、材質(鉄・ステンレスなど)が決められていて、用途(相手が木かプラスチックか金属か、どれくらい力がかかるか等)で使い分けます。

それもただ力でねじ込めばOK、なのではなく、材質や使われている場所によって、ねじ込む力まで決まっています(締付トルクという)

ネジの頭がプラス・マイナス、六角などいろいろあること、場所によっては油を塗布して締めることなども全て意味があります。

また同じ場所が複数のネジで締まっている場合には、全てのネジをバランスよく締めないと歪みが出ます。

これらを守り正しく整備されていないと、ネジ自体やネジ穴の破断・損傷・固着、緩みが生じ、機能が100%発揮されないばかりか、最悪の場合は人命にかかわることはいうまでもありません。

 

教育、学校(生徒・教員)、組織も同じ。

どの生徒(教員)が、どんな性格や特徴を持っていて、どんな場面なら輝くのか。

Aさんがこの場に立つといつも「締まる」な。この場面ではBさんとCさんを組ませると事が運ぶな、あるいはべったり過ぎて弊害があるな、等。

Dさんは最近ちょっと余裕そうだな、ここらでちょっと “ねじ込んで” おくか。逆にEさんはいっぱいいっぱいそうだから、Dさんとは “ねじ込み方” を変えてみよう、等。

FさんはX先生だとあまり響かないけど、Y先生だと人が変わったようになるね(笑)、等。

 

私はこれまでも、ネジの締め過ぎ・緩んだまま・合わない工具の使用でモノを壊してしまったことがあります。そのたびに反省しては「(締めては緩め、)これぐらいかな」という “締め込み加減” を養ってきました。

 

自分に「ネジが一本足りない」のは笑い話としても、人間「ねじ切れてしまう」・「緩み切ってしまう」ことのないようにと、私自身をたまに点検し「締め直」さなくては、と思っています。

 

参考:松井秀明著『エピソードで学ぶ日本の歴史②中世への旅』地歴社・朝日新聞1月30日朝刊 鷲田清一『折々のことば』ほか