校長 その日その日

Principal Day by day

校長 その日その日

 

2023/03/02

(3/2)卒業生よ、さようなら

令和4年度卒業式 式辞(要約)

 

625名の皆さん、あらためてご卒業おめでとうございます。

さて皆さんの高校生活は、コロナ禍という捉えどころのない困難とともにありました。

あらゆるものの中止、縮小、延期…。何のために学校はあるのか?

多くの皆さんが、先の見えないことへの苛立ち、あきらめを覚えたことでしょう。

 

 

しかし、この3年間は本当に、救われない、哀れな時間だったのでしょうか。

 

私はそうは思いません。

 

授業・小テストや課題・部活動といった、単調な日常の繰り返しだったとしても、

皆さんは友人や先輩・後輩、教員たちと笑い合い、語り合うなかに、ささやかな喜びを見出し、いつか平常に戻ったときへの希望を温めながら、大学入試という試練に立ち向かっていったのではないでしょうか。

 

つまりこの3年間、皆さんは「本当の心の持ち方」を知ったのです。

 

古代中国の思想家・老子は言います。

足るを知る者は富み、強(つと)めて行う者は志あり※老子道徳経 上篇

“満足というものを知ることこそ、本当の心の豊かさだ。それでいてなお、油断せず努力を続けられたならば、その時点で目標は達成されているのだ” という意味です。

 

まさに皆さんは3年間、ありきたりに思える日常を受け容れながら、大学受験という試練には、敢然と立ち向かっていった

結果はどうであれ、

いにしえの聖人の言葉のごとく、3年間は「本当の心の持ち方」を身に付けた、尊い時間だったのだと、私は確信します。

 

 

皆さんは今日を限りに、この学び舎を離れ、それぞれの新たなる道へ旅立ちます。

いつ何時、今回のような困難に出会うかもしれませんが、「足るを知り」:何気ない日常やご家族・友人の存在に感謝し、「努めて行う」:努力と挑戦を続け、「志」:夢や希望を実現していってください。

本校で学んだ皆さんなら、きっとできるはずです。

 

 

保護者の皆様、お子様のご卒業を心からお祝い申し上げます。

皆様をお迎えしての式典は、私の悲願でありました。

お子様たちは小学校入学直前に東日本大震災、高校入学とともにコロナ禍と、大切な節目に大きな困難が伴いました。

彼らが無事に成人年齢を迎えられたのは、ひとえに、皆様が注がれた愛情の賜物にほかなりません。

3年間の学校運営の至らない点をご容赦いただくとともに、今後のご家族のご多幸を、心からお祈りしております。

 

最後に皆さん、校訓の愛 知 和、そして校歌のなかの「真まことのわざを学び」、「真のみちを進む」、「わが開成のすがた、こころ」は、すでに皆さんの中に宿っています。

それを忘れずに、一度しかない人生を、一つの命を、精いっぱい生きてください。

 

どうか皆さんお元気で、さようなら。

 

令和5年 3月2日

大宮開成高等学校 校長 松﨑 慶喜

↓ ともに汗を流した、剣道部員たち